この「ヤマモミジのある家」が建つ恵庭は、札幌と千歳空港との中間に位置し、冬の降雪が多い時には50cmをはるかに超え、気温も−20℃となることもしばしばである。一年のうち雪が積もっているのは4〜5ヶ月間の期間であり、半年は緑豊かな季節となる。
敷地は、草花を生産する5haの圃場のなかの一部で400坪程の広さを持ち、緑が豊富で恵まれた環境にある。新緑の頃から紅葉の頃までの緑の変化から、白一色の冬の景観も含めて一年間変化するその魅力的な外部空間をいかに住宅の中に取り込むかを課題の一つとした。北海道では、高気密・高断熱住宅が一般的になり、住宅のハード的な部分が確立しつつある。冬期間の内部空間の環境は、すこぶる快適である。しかしながら内部が外部にたいして閉鎖的なことも事実であろう。外部へ開き、自然を楽しむ仕掛けが少ないのである。 この住宅は、住居棟とアトリエ棟が、ヤマモミジのある中庭を囲むように配され、ブリッジで結ばれている。住居棟の1階はコンクリートブロック造の蓄熱体であり、寝室などの小さな単位のプライベートな空間で構成され、ブリッジと重なる軸線上にアプローチから続く通り土間があり、裏口へと突き抜ける。2階は、居間、茶の間とし、恵まれたロケーションをいかせるように考えた。建物の周辺が外部に対してオープンであるため、ある程度閉ざされた半戸外空間として茶の間続きのコートをもうけ、ブリッジでアトリエへとつながっている。
外部空間と内部空間は対峙するものではなく融合するものだと考える。のびやかで、健康で心地よい空間を実現させたい。
「住宅建築」1997年8月号掲載 |